プレシャスオパール(Precious Opal)

プレシャス・オパールはとても不可思議で、型破りな宝石です。何が不可思議かって、固くて重い鉱物の内部に何と水分をたっぷり含んだ変わり種宝石なのです。その正体は、水晶の成分ニ酸化珪素SiO2に水H2Oが混入した球状の「珪酸微粒子」(シリカ球)がそのまま“固化”したゲル状物質で、どういう訳か“規則正しく整列した”そのシリカ球がもたらす光の七彩効果(オパレッセンス=游色効果)こそ、この宝石の最大の魅力に他なりません。およそ宝石と名の付く結晶鉱物の中にあって唯一非晶質の“準鉱物”的存在という訳です。何かの因縁でしょうか、もとより湿気に対して不安定な非晶質宝石ですから、まるで生き物のように自ら珪酸結晶としての“安定を求めて”、「水晶(クォーツ)」或るいは「玉髄(カルセドニー)」果ては「瑪瑙(アゲート)」へと千年万年の時を経て変化を遂げることもあります。含水宝石オパールは、だから脱水から身を守るため、湿った脱脂綿に優しく包んで保管します。ところで、七色オパレッセンスの美しさの秘密は「水Water」だった、と判明したのはそれほど古くなく、東京オリンピックのあった1960年の直前のことでした。

ジェムストーン物語 プレシャス・オパール ルース

メキシコオパールとダイヤモンドのリング04

PT900 O-2.14ct D-0.92ct

ブラックオパールとダイヤモンドのリング 01

PT900 O-1.9ct D-0.04ct

プレシャスオパールのジェム・メッセージ

プレシャス・オパールの価値を決めるオパレッセンスとは、一体どのようはカラクリでしょうか?―――含水率10~12%と云われるプレシャス・オパールの分子構造はSiO₂・H₂O。これはゲル状シリカ球つまり珪酸の球状微粒子で、電子顕微鏡で覗けば一糸乱れずシリカ球整列している。あくまで規則正しくタテ・ヨコ一線に整列してこそ、そこに天然の“光の回析格子”が形成され、格子に入って来た光がその中で反射・分散を繰り返し、特定の波長の光が“干渉光”として出てきます。シリカ球のサイズによって隙間格子のサイズも微妙に異なり、例えば直径200nm(ナノメートル=10億分の1メートル)サイズのシリカ球の隙間格子からは波長474nmの赤色の干渉光、220nmシリカ球隙間格子からは521nm波長の緑色干渉光、また300nmシリカ球からは760nm波長の青色干渉光という具合に、それらが各色同時に或いは見る角度によって七色が絶妙な組合せで万華鏡のように無数の画面を映し出します。業界ではこのことを「斑(ふ)が出る」とも云います。尚、シリカ球の多数派を占める直径200nmサイズ以下のシリカ球は、小さい球同士集合して、波長170nmの白色干渉色を発し、この色がプレシャス・オパールの地色となったものを「ホワイト・オパール」と呼びます。また、時として集合したシリカ球から波長300nm・ダーク・グレイの地色を呈した時、プレシャス・オパール最上級の「ブラック・オパール」となります。

メキシコオパールとガーネットのリング 01
PT900 O-4.7ct D-0.81ct

オパールのリング 04
PT900 O-3.490ct D-0.930ct

プレシャスオパールのマザーランド(代表的産地)

オパールが「国の石」にまで認定されている国オーストラリア、その大陸東南部内陸砂漠地帯に、オパールの主要鉱山は点在します。採掘だけでなく研磨加工産業まで併せ持つ最大鉱山が、ニュー・サウス・ウェール州ライトニング・リッジ。同州州都シドニーから内陸北西方向に790kmの鉱山街です。周囲は広大な砂漠地帯、気温は50度まで上りますが、立て坑を下った鉱山内部は適温の20度。鉱夫総数2000名余の大半は意外にもハンガリー、チェコ、セルビア等の東欧出身者で、豪州先住民族アポリジニーの姿はありません。東欧から移民の鉱夫が多いのは、燐りのサウス・オーストラリア州クーバー・ペディ鉱山も同様で、地下鉱洞内に何とセルビア正教会の礼拝堂が造られており、今も使われているそうです。

歴史の中のプレシャスオパール

オパールという宝石は、七色の游色効果が有るか無いかで「プレシャス・オパール」と「コモン・オパール」に大別されますが、ここでは時系列(年代別)に全オパールを概観します。プレシャス・オパールの大半を占める「ホワイト・オパール」(白系地色に七彩オパレッセンス)が最初に発見されるのは1863年オーストラリア・ビクトリア州(州都メルボルン)。その17年後の1880年ニュー・サウス・ウェールズ州ライトニング・リッジ鉱山で全オパールの大本命「ブラック・オパール」(グレイの地色に七彩オパレッセンス)が見つかります。同時期に同州ホワイト・クリフ(ライトニング・リッジの西900km)及びサウス・オーストラリア州(州都アデレード)クーバー・ペディ鉱山から「ホワイト・オパール」も見つかります。相次ぐ発見に沸く両州には移民流入の拍車がかり、第1次「オーストラリア・オパール・ラッシュ」の社会現象を引き起こします(1900~1910年)。そして1960年、それまで謎とされていた「オパレッセンス」の光学メカニズムを地元オーストラリア産業研究所のP.J.ガスキン博士が世界で初めて解明、ブームが勢いづきます。軌を一にして、突然中米メキシコでも別タイプのオパールの花が咲きます。地色が無色透明な中に七彩が浮き出る「ウォーター・オパール」そして地色が赤から橙色で七彩の出ない「ファイア・オパール」。1970年オーストラリア・ビクトリア州アンダームーカでは褐鉄鉱母岩にブラック・オパールが侵入したままの「ボルダー・オパール」が採掘され、一方宝石王国ブラジルでは、1990年代リオグランデ・スル州から『ブルー・オパール』と「ピンク・オパール」、そしてバイア州では「キャッツアイ・オパール」(ルチル含有)の珍種が出ています。

プレシャスオパールのトリビア

●水を含むため水晶になりきれなかった石英のことをオパールといいますが、ごくごく稀に水晶に変身できた部分とできなかった部分との二層式の変わり種が出現します。玉髄(クリソ・プレーズ)とオパールの二層を成すこの石は、もはやアゲート(縞めのう)と呼ぶべきでしょうか(?)

プレシャスオパール履歴書

鉱物名

オパール(ただし準鉱物)

和名

蛋白石(たんぱくせき)

組成

ア含水二酸化珪素SiO・H2O

産地

タンザニア・メレラニ鉱山

硬度

5.5~6.5

比重

1.25.~2.25

屈折率

1.44~1.47

結晶

非結晶/ゲル状集合体

誕生石

10月