パライバトルマリン(Paraiba Tourmaline)

スティーヴン・スピルバーグの冒険映画「インディー・ジョーンズ 最後の聖戦」が全米各地で一斉に封切られた1989年1月、米国中西部アリゾナ州ツーソンで開催された世界最大のミネラル・ショー「ツーソン・ショー」で、ある宝石が華々しくデビューしました。「見たこともない“エレクトリック・ブルー”のトルマリンがブラジルから来てるらしいよ」――噂を聞き付けたバイヤーたちがたちまちその石に殺到。まるでそれ自体が光源のようなイルミネーション・ブルーの鉱物に、トルマリン宝石としては異例のカラット単価200ドルの高値が付きました。このニュースは広大なツーソン全会場を駆け抜け、結局ショー最終日には2万ドルの大台を超えてしまいました。相場を吊り上げたのは、主に日系のバイヤーたちだったと云われています。―――色の中でも「青」に特別な思い入れのある日本人は、古来より藍染の藍色を愛でて来ました。この藍色が「ジャパン・ブルー」と内外で云われ始めた頃、この伝統色からはるか対極の「青」に出会ったのです。ネオン・ターコイズ・ブルーからネオン・ピーコック・ブルー色に輝く「パライバ・ブルー」は、“この道何十年”の宝石商を唸らせました。

ジェムストーン物語 パライバトルマリン ルース

パライバトルマリンダイヤモンドリング 商品番号3781

PT900 Paraiba-1.20ct D-1.90ct

パライバトルマリンダイヤモンドリング 商品番号5473

PT900 Paraiba-0.20ct D-0.17ct

パライバ・トルマリンのジェム・メッセージ

実に34種の鉱物種から成る大トルマリン族の中で、美しさと稀少価値に於いて頂点に立つ宝石、それがパライバ・トルマリンです。 トルマリン族のうち特に宝石質鉱物の最大勢力であるリチウム・ナトリウム起源の「エルバイトElbaite」――その成分の一つ鉄分が地中の銅元素と置き換った結果、結晶が世にも不思議なネオン・ブルーの“イルミネーション・カラー”を発揮します。本来石英系の鉱物とは相性の悪い銅元素が、スルッとそこに入ってしまうのも謎ですが、その銅元素があのピーコック・ブルーのネオン・カラーをもたらすのは、もっと深いミステリーです。―――私達が体験的に判っていることは、透明なネオン・ブルーは摂氏700度の地中環境下で、太古の時を経て形成されるということ。大地(自然熱)の途轍もなく長い営みを“待てない”現代の私達人類は、原石を炉の中で加熱しています。これは、“自然の足らざる部分を人の手が補う”いわゆる「加熱エンハンスメント(Enhancement=価値を高めること)」ですから、加熱により鉱物素材が劣化する心配はありません。尚、非加熱ナチュラルの極美ネオン・ブルーのパライバ・トルマリン(45.31ctオーバルカット)の事例も、極めてレアですが、米国市場で報告されています。

パライバトルマリンダイヤモンドリング 商品番号3780
PT900 Paraiba-1.512ct D-0.52ct

パライバトルマリンダイヤモンドネックレス 商品番号7960
PT900 Paraiba-0.30ct D-0.21ct

パライバ・トルマリンのマザーランド(代表的産地)

南米大陸最北西端ブラジル・パライバ州が、文字通りパライバ・トルマリンの発見地にして現役の産地です。リオ・デ・ジャネイロから国内線で北へアラゴマス州レシフェ、そこから内陸へ州境を越えるとパライバ州スーザ。世界的なタングステン鉱山の点在する一帯を北へ約200㎞。バターリア鉱山Bataliha Mineに着きます。坑口より最深地下60mまで掘り下げた立て坑を下ると、水平方向に数キロの坑道が張り巡らされます。発見当初の手掘り工法も今世紀に入って機械化されました。パライバ州の現役パライバ・トルマリン鉱山は、他にキントス鉱山、モロアルト鉱山、そして最も新しいグロリアス鉱山。突然現れたこれら“宝の山”の採掘権を巡って採掘業者間或いは鉱山主と州政府の間に訴訟沙汰が絶えず、採掘量は年々減り続けます。揉め事に嫌気がさした採掘業者たちは、パライバ州と地下でつながっている北隣りのリオグランデ・ド・ノルデ州ムルングMulungu地区の地中深くから、ネオン・ブルーのトルマリンを掘り当てたのは1990年、以後坑道が整備され商業化します。

歴史の中のパライバ・トルマリン

デビューして僅か30年の宝石ですから、これはパライバ・トルマリンの「現代史」です。ツーソンの檜舞台デビュー2年前の1987年2月、ブラジルのガリンベイロ(同地で「宝石掘り」のこと)エイトーレ・バルボーザがパライバ州バタウラの丘を探索中、雲母やカリ長石の晶洞の中に青紫色に光るトルマリンを見つけます。通例のトルマリン原石の加工手順に従って炉内で加熱、褐色み飛ばして更に700度まで加熱すると、まさかの透き通ったネオン・ブルーに。そして、ツーソンで世界デビュー。高値が高値を呼び、現地ブラジルにパライバラッシュが起きますが、特需に沸く州内鉱山は不幸にも採掘権訴訟合戦で開店休業状態に陥りますが、その間、同州とは地続きのリオグラデ・ド・ノルデ州の鉱山が、採掘量は少ないものの、“本家”に代わって「パライバ・トルマリン」を名乗ります。

ブラジル北西端部とは大西洋を隔てた対岸のアフリカ中央部ナイジェリアから、ネオン・ブルーのトルマリンが出るのは新世紀の2001年です。続いて2003年東アフリカモザンビークからも“含銅ネオン・ブルー”が出て、本家ブラジルのお株を奪うまでになります。アフリカ産でも「パッライバ」の名で売りたい両国の鉱山主は、何と掘り出した石をブラジルに運んで、そこから再出荷したそうです。今日では、銅元素によるネオン・ブルー石は、産地を問わず「パライバ・トルマリン」と名乗れることになりました。2006年から宝石界に導入された「蛍光X線分析装置」によって銅の含有を示す「成分分析報告書」が宝石鑑別署に添付されていれば、その宝石は堂々たるパライバ・トルマリンとなります。

パライバ・トルマリンのトリビアから

●エレクトリックなネオン・ブルーを発するこの宝石の人気の秘密は、案外素朴なものでした。それは、万国共通の交通ルール「進めの青信号」の「青」を彷彿させる安心の色だったのです。

●宝石学の最高学府GIA(米国宝石学会)の創設者リチャード・リディコート(故人)が、1977年マダガスカルで発見し自身の名を命名したトルマリン族鉱物「リディコータイトLiddicoatite」の中にも、「銅を含みネオン・ブルーに発色する変種」の存在が、昨春GIAの研究で判明しました。この石に付くレポート(鑑別署)にも「含銅リディコータイト別名パライバ・トルマリン」と記されます。

パライバ・トルマリン履歴書

鉱物名

トルマリン Tourmaline

和名

和名電気石(でんきせき)

組成

リチウム・マグネシウムと
カルシウム・カリウム・ナトリウムと
アルミニウム・クロム・バナジウムの
硼酸塩・珪酸塩鉱物
(Li,Mg,Mn)(Ca,K,Na)(Al,Cr,V)(BO3)3(SiO3)6(OH,F)4

産地

ブラジル、ナイジェリア、モザンビーク

硬度

7~7.5

比重

3.06

屈折率

1.624~1.644

結晶

結晶六方晶系

誕生石

10月