レッドベリル(red beryl)

アメリカのユタ州とその周辺でしか採れない赤紫のベリル宝石――それがレッドベリルです。
10年前冬季オリンピックの開催地ソルトレイクシティーを州都とし、多くの世界的スキーリゾート地をいただく同地のイメージは、降り積もる雪の「白」。
そんな山岳地帯から出て来た宝石が、見るも鮮やかな「赤」だったのです。
生粋のアメリカンジェム「レッドベリル」が発見されたのは、ユタ州がアメリカ合衆国45番目の州として名乗りをあげた1896年の僅か8年後のこと。
その後世界に君臨する大国アメリカを象徴するメモリアルジェムです。

レッドベリル ルース

 

レッドベリルのジェムメッセージ

本講座初登場のベリル族宝石です。ベリリウムをキー元素とするアルミニウム珪酸塩鉱物で、その代表選手は云わずと知れた鮮やかな緑のエメラルドです。
純粋なベリルは例によって無色透明、そこに異金属元素が結晶内に混入して、先のコランダム同様色々なカラーバリエーションを演じてくれます。
クロム混入の場合はエメラルド・グリーン(コランダム+クロムの場合のルビー・レッドとは好対照です)、そしてベリルにマンガンが入った時に、レッドベリルが誕生します。
同じベリル仲間には淡いピンクのモルガナイトがあり、発色原因は同マンガンです。
ここでは色の濃い淡いで線引きしますが、鮮やかさから来る美しさは、レッドベリルがモルガナイトを圧倒します。

ベリル宝石全体は今でも世界各地から産出し、それほど稀産宝石ではありませんが、このレッドベリルに限って云えば、世界でたった一箇所米国ユタ州でしか採れず、しかも既に掘り尽くされたとも云われる、第一級の稀少石です。

レッドベリル ルース2 レッドベリル ルース 赤以外

レッドベリルのマザーランド(代表的産地)

1904年米国ユタ州ジャブ郡トーマスレインジが第一発見地です。発見者は鉱物学者メイナード・ビクスビー。
発見者の名に因んで、この宝石は「ビクスバイト」と命名されて半世紀が経過します。
同じくユタ州南西部ビーバー郡ワーワーマウンテンで、今度は宝石質の結晶がレイマー・ホッジスによって掘り出されて、にわかに色めき立ちます(1958年)。
採掘権をホッジスから買ったレックス・ハリスはその石をGIAに持ち込み、”美しい赤いベリルだから「レッドベリル」”との商業名を発想して、宝石界デビューを果たしました。

歴史の中のレッドベリル

当初ビクスバイトと命名されたベリル宝石が、「レッドベリル」としてデビューした経緯は上述しました。実はこの宝石のネーミングについてはその続きがあります。
採掘権者レックス・ハリスは1994年、レッドベリル拡販を期して、その名も”レッドエメラルド社”という会社とビジネスを組みます。
以来、地元アメリカではこの宝石を「レッドエメラルド」と呼ぶようになったようです。
商業名とは云え少々無理があるネーミングですが、権利当事者が係ってのコマーシャルネームとなれば、誰も文句は付けられなかったのでしょうか。
そして時を待たずその直後、状況は一変します。
エメラルドに次ぐメジャーな赤いベリルの出現を夢見た企業の1つとして、あのピンクダイヤモンドの覇者アーガイル鉱山を率いるリオ・ティント社が、新しい採掘権者としてユタ州に名乗りを上げたのです。
世界一,二を争う鉱業・鉱山資本の多国籍企業リオ・ティント社の考えは、大規模・機械化による効率採掘でレッドベリルを独占し、同じ色系統のピンクダイヤモンドのビジネスとの相乗作用を目論んだ、と思われます。
しかし結果的には見込み違いだったのでしょうか、レッドベリル・ドリームの夢は破れ、同社はユタ州を去ります。
現在鉱山は再びレックス・ハリスの手に戻り、家族だけで細々と採掘は続けられています。

レッドベリルのトリビアから

■『ジュエルペット』というアニメ・キャラクターのシリーズがあります。
サンリオとセガが共同制作したそのキャラクター名というのが、すべて宝石の名から来ているというから、とてもユニークで傑作なネーミングばかりです。総勢70匹ものジュエルペットたちがいますが、ここではレッドベリルから名を貰った「リル」ちゃんを紹介します
――正式名・レッドベリル、外見・肌色の子豚(メス)、ジュエルパワー・心身浄化、誕生日・4月24日。
プロフィール=ミスジュエルランド・コンテストで優勝経験があり、好評の自著「美しさそれは罪」で、ダイエットは外見だけでなく心のダイエットこそ重要、と考える。
アニメの世界とはいえ、不思議なリアリティーを感じます。
リルちゃん他ジュエルペットたちに会ってみたい方は、テレビ東京(系列)毎日曜朝9:30の番組「ジュエルペット」(ハイビジョン放送)をご覧下さい。

■レッドベリルの聖地米国ユタ州は、もともとキリスト教の一派(モルモン教徒)が未開の地を切り拓いた新しい州です。
「4福音書から始まる新約聖書には、実はもう一つ福音書が実在した。
それが知られざる使徒モルモンが書き記した第5福音書だ」と主張する彼らが、「モルモン経典」という聖書に準ずる聖典を片手に、その伝道の総本山に決めた土地が米国ユタ州なのです。
外タレさんでお馴染みのケント・デリカット氏やケント・ギルバート氏がユタから渡日した目的は、他ならぬ「伝道」だったことはよく知られています。
上述したメイナード・ビクスビーやレックス・ハリスなどもモルモン教徒と推察され、彼らの祖先はヨーロッパからの移住組と思われます。
参考までに、州名「ユタ」は同地の先住民族インディアンの部族名「ユテ族」から、また「ワーワーWah Wah」山脈の名もインディアンが名付けたのでしょうか。

レッドベリル ルース4

レッドベリル履歴書

鉱物名

ビクスバイトBixbite

和名

緑柱石 (りょくちゅうせき)

石名由来

発見者Bixbyの名より

組成

ベリリウムとアルミニウムの珪酸塩鉱物 Be3Al2Si6O18 + 遷移元素 マンガンMn

発見地

米国ユタ州

硬度

7.5~8

比重

2.72

屈折率

1.577~1.583

複屈折

0.006

分散度

0.014

結晶

六方晶系

星座石

10月24日~11月21日 (さそり座)

時間石

午後3時

石言葉

「インサイト(洞察力)」