インペリアルトパーズ(Imperial Topaz)

宝石はみな固有の石言葉を持っています。
その石言葉が、時として世界史の表舞台に出て来ることがあります。
トパーズの石言葉「友情」のことです。
―――諸国の王たちが領土合戦に明け暮れる
ヨーロッパ18世紀、3人の女傑同士の”女の友情”が歴史を動かしました。
プロイセン(現ドイツ)の領土侵略を脅威とする周辺3国=オーストリア女帝マリア・テレジア、フランス・ポンパドール夫人(ルイ15世の公妾)そしてロシア女帝エリザベータの巴形の結束がそれを一時的に阻止したのです。
「3枚のペチコート作戦」と歴史的に呼ばれるこの”3婦人同盟”の隠れた主役が実にインペリアルトパーズの指輪だったのです。

その指輪を作った主は、当時領土内でインペリアルトパーズを産した、ロシアのエリザベータ帝です。
ロシア語で「友情」という意味の「ドル-ジバの指輪」、とそれは名付けられますが、彼女は不幸にしてその直後急逝します。
結局プロイセンは領土を広げ、尊い女たちの友情は、動乱の歴史の中に飲み込まれて行くのでした。

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SOLD OUT
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K18WG/PT IT-2.450ct D-0.120ct

インペリアルトパーズのジェムメッセージ

シリカ(珪酸塩)とアルミナ(アルミニウム)、そこに水酸基(OH)を含むタイプ、或いは弗素(F)を含むタイプの2タイプに枝分かれするのがトパーズ宝石グループ。
その内OHタイプのトパーズに限定して「インペリアルトパーズ」と呼びます。
コニャックカラーで代表されるOHタイプ・トパーズは、美しさと希少性で明らかに無色~褐色のFタイプ・トパーズに優る事から「インペリアル~」や「プレシャストパーズ」としても区別されます。
 また近来より、世界の水晶の商人たちが黄水晶(シトリン)やスモーキークォーツを売りさばく為に意図的にそれを「トパーズ」或いは「シトリントパーズ」「スモーキートパーズ」と”偽称”してきた悪しき伝統に抗議してトパーズ産地国のブラジルは国を挙げて宝石名トパーズの頭に「インペリアル」の冠を被せた、という事情もあります。
皇帝ドン・ペドロ統治下のブラジル、1883年のことです。

ずんぐりとした結晶が多いFタイプ・トパーズに比べ、OHタイプ・インペリアルトパーズはすらっと長くシャープな結晶です。
結晶形を活かしたロングストーンのジュエリーが素敵ですが、長い方向に直角の断面で割れ易い弱点があり、強度を意識した宝飾造形が望まれます。
石の和名を「黄玉」という如く、インペリアルトパーズはコニャック・イエローが標準色と思われがちですが、この石のベストカラーは、シェリー酒のようなレッディッシュオレンジ(赤みがかった橙)。イエローは脇役級と云わねばなりません。
そしてその色起源は、コランダム鉱物のルビーと同様、微量に混入したクロム元素です。
赤色蛍光性を併せ持つクロムは、その量の程度により一層鮮やかな光のマジックを私たちに見せてくれます。
このクロムによるイエロー~オレンジカラーの演出は、同時にナチュラルの証明でもあります。
(同じくナチュラルのパキスタン産ピンクトパーズについては「トリビア」欄ご参照)。
―――加熱や放射線照射処理がつきもののFタイプ・トパーズと異なり、インペリアルトパーズはナチュラルな美しさが十分に楽しめます。

インペリアルトパーズのマザーランド(代表的産地)

Fタイプ・トパーズの産地は世界広範囲に分布しますが、OHタイプ・トパーズの発見地にして最大供給地は、他ならぬブラジル・ミナスジェライス州オーロプレート近郊です。
同地での発見は1735年、そして宝石名に「インペリアル」の冠が付いたのは上述の通り1883年―――古代ローマ時代からあったFタイプ・トパーズと比べるとインペリアルトパーズはぐっと近代の宝石なのです。

歴史の中のインペリアルトパーズ

伝説によれば、中東の紅海上に浮かぶ
「トパゾス島」(現ゼベルゲット島)で見つかった石だから誰かがそれを「トパーズ」と名付けたようですが後世になって「ペリドット」と訂正されました。
昇った梯子を外されたようなややこしい話ですがこれは、極めて稚拙だった鉱物学が時代と共に進歩し、”きのうの常識が今日の非常識”となった一例に過ぎません。
1650年当時、先端を行っていた英国の鉱物学者ニコルでさえ、トパーズは褐色の宝石の何とすべてを指していました。
19世紀に入った1801年、「アウイナイト」の命名者で有名なフランスの結晶学者ルネ・アウイによって初めて、真正トパーズ、しかもOH、Fの2タイプまで確定させました。

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K18 さとう くにをIT-5.260ct D-0.570ct
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PT T-1.460ct D-0.190ct

インペリアルトパーズのトリビアから

■コニャックカラー・インペリアルトパーズの聖地ブラジルからかけ離れた、アジア大陸の辺境の地パキスタンのカトラン渓谷から見るも鮮やかなピンクのインペリアルトパーズが発見されました。
つい近年の1972年のことです。
コニャックイエローから良くてもシェリーオレンジどまりと思っていたインペリアルトパーズ・ファンには、最高のサプライズとなりました。
「ピンクトパーズ」と云えば、イエロー系のインペリアルトパーズをわざわざ加熱処理(ピンク着色)したものもあるため、本稿では真正OHタイプのナチュラル・ピンクのトパーズにもインペリアルの冠を被せて「インペリアルピンクトパーズ」と呼ぶことにします。

■インペリアルトパーズのコニャックイエローの輝きには及ばないものの、Fタイプのトパーズにも黄色い「イエロートパーズ」がしっかり存在します。
見た目オレンジみが強ければ強いほどOHタイプに近いのですが最終確認はやはり機材測定で確定します。
すなわち屈折率と比重値比較です。
参考までに、比較値を示します―――

  屈折率 比重 結晶形
OHタイプ 1.629~1.637 (Fより高い) 3.49~3.53 (Fより低い) 長くてシャープ
Fタイプ 1.609~1.617 3.53~3.57 ずんぐりむっくり

博物館で出会える有名インペリアルトパーズ

「世界最大のトパーズ結晶」(重量271kgの原石)
アメリカ自然史博物館(ニューヨーク, 米国)

「アメリカン・ゴールデン」(22,982Ctのカット石)
アメリカ自然史博物館(ニューヨーク, 米国)

「ドイツ・シュネッケンシュタイン産のトパーズ」(長さ180ミリの結晶原石)
フライブルグ山岳博物館(フライブルグ, ドイツ)

インペリアルトパーズ履歴書

鉱物名

トパーズ Topaz

和名

黄玉 (おうぎょく)

石名由来

発見地中東の「トパゾス島」より(後にそれはペリドットと判明)異説に「火炎」を意味するサンスクリット語Topas(タパス)より

組成

アルミニウム珪酸塩と水酸基又は弗素の鉱物Al2(SiO4) (OH,F)2・

発見地

ブラジル・ミナスジェライス州

硬度

8

比重

3.49~3.53(OH) 3.53~3.57(F)

屈折率

1.629~1.637(OH) 1.609~1.617(F)

結晶

斜方晶系

結婚石

23年記念石

誕生石

11月

占星石

射手座(11/22-12/21)

石言葉

Friendship(友情)

No.156
ピンクトパーズリング
PT900 IT-1.460ct D-0.190ct
No.906
インペリアルトパーズペンダント
PT900 IT-8.859ct D-0.810ct