クリソベリルキャッツアイ(Chrysoberyl Cat’s Eye)

猫好きでなくとも憎めないのが子猫のつぶらな眼。
よく見ると眼の中の瞳は黒くタテ長でそれが尚更愛くるしくも魔性的でさえあります。
―――そんな猫の眼の情景を宝石の中に再現したのが、猫眼金緑石、すなわちクリソベリルキャッツアイなのです。
ふっくらとした蜂蜜色した金緑石の中央を、くっきりと走る乳白色の光の帯はむしろ黒猫の妖艶な眼差し、とでも云うべきでしょうか。

本講座初登場の鉱物クリソベリルは、石名の一部でもあるベリリウム元素が、酸化アルミニウムに加わったものです。
酸化アルミニウムとは単体でコランダム(ルビー、サファイアの鉱物名)のことですから、それがベリリウムと合体した宝石がクリソベリルと認識しましょう。

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PT900 C-1.150ct D-0.330ct
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PT900 C-4.620ct D-1.280ct

クリソベリルキャッツアイのジェムメッセージ

クリソベリルはしばしば針状ルチル結晶を内包しそれが束なって無色透明・繊維状のチューブ・インクルージョンを形成し、時として石全体を覆います。
そこに入射した光は、そのインクルージョン方向とは直角に(平行でなく)一本の光の帯を描いて反射します。例えば、釣り糸等の糸巻きの反射光沢が糸方向に直交するのをご想像下さい。
この光学効果を「猫眼効果」英名で「シャトヤンシー」或いは「シャトヤントバンド」といい同効果を発揮するクリソベリルのフルネームをクリソベリルキャッツアイという訳です。
本来様々な色を演ずるクリソベリルですが、絹光沢のような質感の黄緑がかった褐色の地色に一直線の白い光の帯を映し出す クリソベリルキャッツアイは、見事という他ありません。
濃密な蜂蜜(ハニー)のようなボディーカラー、そして鮮やかなミルクの河のようなライン―――この”ミルクと蜂蜜効果“がこの宝石に同時に実現するのは、極めて稀だからです。

クリソベリルキャッツアイのマザーランド(代表的産地)

クリソベリルをカボション研磨したら、表面からシャトヤンシーが浮き出た、という光学現象が発見されたのは古い昔でなく近年のことです。しかし、誰が、いつ、どこで“猫の眼”に出逢ったかは、殆ど不明です。
ブラジルで発見された石が最初のクリソベリルキャッツアイと云えそうですが残念ながらそれも確たる資料は見当たりません。
最初の商業産出地がスリランカ・ラトナプラ地方であったのは、間違いないようです。しかしそこは1980年代でほぼ枯渇してしまい以後ブラジル・ミナスジェライス州アメリカーナ渓谷地域に移り、更に今世紀に入ってマダガスカル・イラカカ地方が最大の供給地になっています。

歴史の中のクリソベリルキャッツアイ

大戦後の国際宝石市場で、ダイヤモンド以外に特に日本人の消費量が多かった宝石としてオパール、ヒスイ、そしてこのクリソベリルキャッツアイが挙げられます。
国際相場を引き上げたというほど、日本人の購買力は旺盛だったと云われますが、クリソベリルキャッツアイに至っては時の世界相場を作るほどの買いっぷりだったようです。
余談ですが、東京オリンピック後の好況に沸く日本の首相(池田勇人)が、スリランカ(当時セイロン)訪問の際、家族への土産にとクリソベリルキャッツアイを購入したそうですが、その購入価格(1,000万円余)が当時の新聞ネタになりました。

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PT C-1.260ct D-0.120ct
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C-4.125ct D-1.060ct

クリソベリルキャッツアイのトリビアから

■光と宝石が演出するシャトヤンシー(猫眼効果)という光学現象は、クリソベリルに於いてこそ最も効果的に且つ最も美しい映像を私達にもたらしますが、内包物等の条件さえ揃えば、他の宝石にも十分現れます。
その代表例は―――アパタイト、ダイオプサイドエンスタタイト、コーネルピン、シリマナイトクォーツ、ネフライト、トルマリン、ベリル、オパール等々で、各石名の後に「~キャッツアイ」又は「~キャッツアイタイプ」と表記します。
と ころで、クリソベリルと同じ組成の鉱物アレキサンドライトにもキャッツアイタイプが存在し昼・夜で変色する特性だけで高価なこの石に更に猫の眼効果が入っ たアレキサンドライト・キャッツアイは、同サイズのダイヤモンドをも遥かに凌ぎ、相場が成立し得ないほどの高嶺の花となっています。

■宝石の中の「キャッツアイ」は、猫の目玉(眼球)でなく細長い瞳孔の様を指しますが、その瞳孔は明るい時にこそ細長くても、暗い夜道などでは実に眼球全体に開き、暗闇に光る二つの白球を私達はよく目にする訳です。
ま た、面白いことに毛色が白い白猫の瞳は”金目銀目”といって左右瞳の色が違うそうです(黄みと青み)。そしてもう一題、これほど身近な動物なのに十二支に 猫年がないのは何故でしょう?「十二支」の産みの親 古代中国には、そもそも猫がいなかったとか(?)。その代りなのでしょうか、同じネコ科のトラ年を抜擢しました。宝石界にも虎目石ならぬタイガーズアイが あり有名なタイガーモチーフのジュエリーが一世を風靡したこともありました。

■上空の天体には「キャッツアイ星雲」という星群があります。 りゅう座に位置するこの惑星状星雲は、宇宙望遠鏡のX線データ画像でしか確認できませんが、その画像からは猫の眼をイメージできる青黒い”瞳”が観察さ れ、まるで宇宙を見渡しているかのようです。月に行ったときのウサギ君も、この星に目くばせしたのでしょうか?

博物館で出会える有名なクリソベリルキャッツアイ

「マハラニ・キャッツアイクリソベリル」 (スリランカ産 58.2Ct)
スミソニアン自然史博物館(ワシントンDC, 米国)

クリソベリルキャッツアイ履歴書

鉱物名

クリソベリルキャッツアイ Chrysoberyl Cat’s-eye

和名

猫眼金緑石 (ねこめきんりょくせき)

石名由来

黄金を意味するギリシャ語Chrysos(クリソス)とベリル元素を意味する同Beryllos(ベリロス)より

組成

ベリリウムと酸化アルミニウムBeAl2O4・

発見地

ブラジル

硬度

8.5

比重

3.73

屈折率

1.746~1.755

複屈折

0.009

結晶

斜方晶系

結婚石

18及び39年 記念石

曜日石

金曜日の宝石

石言葉

Exorcism from Evil Spirit(悪霊を遠ざける)

No.6160
キャッツアイ ルース
11.05ct
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No.190
PT900 キャッツアイ リング
C-1.15ct D-0.33ct
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No.201
キャッツアイ ペンダント
PT900/850 C-1.320ct D-0.04ct
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No.851
キャッツアイ リング
PT900 C-5.741ct D-0.51ct
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